職種の比較2026-07-18執筆:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

FDE(フォワードデプロイドエンジニア)とフォワードデプロイドPMはどう違うのか——違いの本質は「起点」にある

FDEとフォワードデプロイドPMはどう違うのか|FDEクエスト
この記事の要点

「FDE(フォワードデプロイドエンジニア)とフォワードデプロイドPMはどう違うのですか?」

最近、そんなご質問を頂戴することが増えました。そもそも、フォワードデプロイドPM(FDPM)という職種は、当社ポテンシャライトが提唱している職種名になりますので、定義次第でいくらでも言えてしまうのですが、ただ「フォワードデプロイド」という言葉自体は、AI時代に間違いなくトレンドになるだろうと僕は思っています。だからこそ、この2つの職種の違いを、いま言語化しておく価値があると考えました。

では、参りましょう。

0. 前提——「フォワードデプロイド」とは何か

まず前提を短く揃えます。FDEとは、顧客(ユーザー)と直接コミュニケーションを取り、既存のシステム(プロダクト)への要望(課題)を文言化し、開発(実装)まで行うエンジニアのことです(定義の詳細と求人実測は定義の正本記事を参照してください)。

「フォワード」は和訳すると「前へ」。サッカーで最前線に立つのはフォワードですよね。ビジネスの世界に当てはめると、フォワードは営業職、ミッドフィルダーはカスタマーサクセスやマーケティング、そしてディフェンダー側にバックオフィスやエンジニアが置かれる——そんなイメージです。一般的に、エンジニアご自身が「顧客の前」に出ること自体は多くはないと思います。「デプロイド」は「配置される」。つまりフォワードデプロイドとは、「顧客の前へ配置される」ことを指しています。

この「顧客の前へ」という動きが、エンジニアだけでなくPMにも起き始めている。ここからが本題です。

1. フォワードデプロイドPM(FDPM)とは

プロジェクトマネージャーは、一般的には要件定義や基本設計の業務がメインになることが多いです。また、要件定義を済ませた後は、プロジェクトが円滑に進むために全体の調整をしたり、スケジュール管理をしたりすることも、仕事の一部となります。

ただ、プロジェクトマネージャーの職域についても、AIの侵食はどんどん始まっています。AWSのKiroというAIエージェントが、要件定義や基本設計をほぼパーフェクトに実施するということも、耳にすることが増えてきました。エンジニアのコーディング業務がClaude CodeやCursorに代替され始めたのと同じ構図が、PMの中核業務にも及び始めているわけです。

そのため、フォワードデプロイドエンジニアとフォワードデプロイドPMは、同じような背景で「職域」が「フォワード」になっていくような、そんなイメージです。自分のメイン業務がAIに侵食されるからこそ、職域を顧客側——課題の文言化、課題提起、企画——へ伸ばしていく。

ただ、いわゆるプロジェクトマネージャーは、ソフトウェアエンジニアと比較すると、「フォワード」の領域がもともと多いです。プロジェクトマネージャーは顧客とコミュニケーションを取りながら進める機会も多く、ソフトウェアエンジニアは顧客の前に出ない方も多い中で、「フォワード」という観点においてはアドバンスしているようなイメージです。

一方で、フォワードデプロイドPMに求められるのは、フォワードデプロイドエンジニアと同様に、顧客の曖昧な要望を文言化して、課題を提起し、そしてシステムやサービス、機能レベルであったとしても企画をすることです。2026年時点では、この上流の業務がフィーチャーされており、「フォワードデプロイドPM」というポジションが誕生したような、そんな背景です。

2. 違いの本質は「起点」である

では本題の、FDEとFDPMの違いです。現時点における仕事内容の違いは、少ないかと思います。ただ、明確に異なるのは、「起点」です。

こんな違いです。行き着く先——顧客の前に立ち、課題を文言化し、解決策を実装して定着させる——はほぼ同じでも、どこから出発してその職域にたどり着いたのかが違う。同じ山頂に、別の登山口から登っているイメージです。

2-1. どちらが有利かではなく、どちらが得意か

「どちらが有利なのか、優位なのか」という話も発生するかと思いつつ、重要なのは得意分野の話だと思うのです。プロジェクトマネージャーは、「顧客折衝能力」に一定長けていると思います。一方で、エンジニアは技術的知見に長けています。そのため、どちらにも強みと弱みが発生しています。

これは当サイトの実測データとも整合します。FDE求人64件の必須要件1位は顧客折衝(46/64件)で、開発経験(43/64件)を上回りました。つまりFDE採用の現場ですら、エンジニアの弱点になりがちな「フォワード」側の能力を最も重く見ている。逆に、PM出身者がFDE系の求人に向かうときに問われるのは、細かい技術的知見の側です(PM側からの越境ルートはPM・ビジネスサイドからFDEへの記事で検証しています)。

2-2. 共通項かつ最重要事項——「本質的な顧客の課題は何か」

明確に言えるのは、プロジェクトマネージャーであったとしても、エンジニアであったとしても、「このシステムやプロダクト、サービスが解決したい、本質的な顧客の課題は何なのか?」を強く意識した上で、これまで仕事をされていらっしゃった方は、大きなアドバンテージを得るように思います。なぜならば、フォワードデプロイドPMもフォワードデプロイドエンジニアも、その観点が共通項であり、最重要事項だからです。

起点の違いは経歴の話であり、面接での語り方の話です。でも合否と活躍を分けるのは、起点ではなくこの共通項のほうだと、僕は捉えています。

3. 「課題文言化や課題提起は、私できますよ?」と言う前に

ここで、耳の痛い話を一つさせてください。顧客やユーザーの課題は無数に存在します。

例えば、ダイエットをして痩せたいという課題があった場合に、課題解決策として、「食事をする量を減らす」「ランニングをする」「糖質制限をする」などの課題解決策があります。つまり、課題の文言化や課題解決策の明示は「できた」ということになりますよね。ただ、皆さん、ダイエットを成功されたことはありますか?解決策を見出し、実行したけれども、解決できなかったという方が、ほとんどなのではないかと思います。

何を申し上げたいかというと、顧客やユーザーが感じている課題の解決策をシステムやサービスに実装したとしても、本当にその課題が解決できたかは分からないということです。

「本質的な」という言葉は、よくビジネスの世界で活用されることがありますが、まさにこの「本質的な課題」にたどり着くスキルが重要になってくるのです。事業部長やマネージャーが、「こんな施策に取り組んでみよう!」と打ち出した際に、「え、その施策、ズレてない?」と思ったことってありませんか?つまり、今の問題や課題の感じ方や捉え方は、ユーザーによって異なります。そして、表層的な課題解決をしたとしても、本質的な課題は解決されないことも多くあります。

FDEでもFDPMでも、要件どおりに作れることと、本質的な課題を解決できることは、別のスキルです。前者はAIがどんどん得意になっていく。後者が、フォワードデプロイドという職域の中核として残る部分だと思っています。

4. 顧客に課題に気づいてもらうためには、コミュニケーション力が非常に重要

本音を申し上げると、一般論として、いわゆるエンジニアの方々は、コミュニケーション力という点において、ビジネスサイドの方と比較すると、やや劣る傾向にあると思います。ここで言うコミュニケーションというのは、「技術を正確に表現するコミュニケーション」というよりは、「顧客と気持ちの良いコミュニケーションを取る」という観点です。

皆さん、仕事でも私生活でも、「あなたの課題は〇〇だから、これを改善したほうが良いですよ」と唐突に言われて、イラッとした経験ってありませんか?普通、人間は自分の至らないこと、つまり問題や課題を指摘されたら、心中穏やかではないことは多分にあるかと思います。

エンジニアという仕事は、課題解決をする仕事だと僕は捉えています。そのため、とにかく「事実」に目を向ける傾向があると思います。表面化している事実をどのように解決していくのか?というスキルには長けていると思うのですが、顧客やユーザーは人間であって、そこには感情が伴います。

そのため、フォワードデプロイドをするにあたって、ただ課題を追求し、突き止めるだけではダメなわけです。人間には感情がある中で、顧客やユーザーが「解決したい」と思えるような課題を、コミュニケーションによって創発させながら、お伝えする必要があります。論理的にはその課題が成立していたとしても、顧客やユーザーがそれに合意するかどうかは分かりません。「どう考えても、これが課題なのに、なぜ分かってくれないのか」と感じることも、多数あるでしょう。ただ、それがフォワードデプロイドをするために必要な要素なのです。

この観点は、FDEとFDPMのどちらを目指すかにかかわらず共通です。そして、もともと顧客の感情と向き合いながら合意形成をしてきたPMの方には追い風であり、事実ベースで最短距離を走ってきたエンジニアの方には、意識的に鍛える必要のある領域だと思います。

5. 結び——起点はどこでもいい、向かう先は同じ

整理します。FDEとFDPMの違いの本質は「起点」です。開発・実装から出発するか、要件定義・基本設計から出発するか。PMは顧客折衝でアドバンスし、エンジニアは技術知見でアドバンスする。そして両者に共通する最重要事項は、「このプロダクトが解決したい本質的な顧客の課題は何か」を問い続ける姿勢と、感情を持つ人間である顧客と課題に合意するコミュニケーション力です。

ご自身の起点がどちらであっても、フォワードに職域を伸ばす道は開いています。エンジニア側の方はFDEの定義から、PM・ビジネスサイドの方は越境の三本ルートから、それぞれの登山口を確認してみてください。それでは今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. FDEとフォワードデプロイドPM(FDPM)は何が違うのですか?

現時点における仕事内容の違いは少ないですが、明確に異なるのは「起点」です。FDEは「開発・実装」を起点として職域をフォワード(顧客側)に伸ばしており、FDPMは「要件定義・基本設計」を起点として職域をフォワードに伸ばしています。PMは顧客折衝能力で、エンジニアは技術的知見でそれぞれアドバンテージを持ちます。

Q. フォワードデプロイドPM(FDPM)とは誰が提唱している職種ですか?

株式会社ポテンシャライトが提唱している職種名です。プロジェクトマネージャーの中核業務である要件定義・基本設計にAIの侵食(AWSのKiroなど)が始まる中で、顧客の曖昧な要望を文言化し、課題を提起し、企画まで担う「フォワード」寄りのPM像を指しています。

Q. FDEとFDPMに共通して最も重要なスキルは何ですか?

「このシステムやプロダクトが解決したい、本質的な顧客の課題は何なのか?」を強く意識して仕事をしてきた経験です。表層的な課題解決策を実装しても本質的な課題は解決されないことが多く、加えて、感情を持つ顧客が「解決したい」と合意できる形で課題を伝えるコミュニケーション力が、両職種共通の最重要事項になります。

執筆:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき執筆しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

この記事を、eBookで持ち帰る。 本記事をスライド形式のPDFに再構成しました。お名前とメールのご登録だけで、その場でダウンロードできます。
無料でPDFを受け取る →

あなたの「起点」は、どちらにあるか。

開発・実装起点か、要件定義・基本設計起点か。15問の適性診断で、ご自身のフォワードデプロイド適性の現在地を測れます。

適性診断をやってみる → キャリア面談をする →

あわせて読む

🎬 動画で学ぶ面接対策(無料)

9割の人が勘違い。面接は課題解決の場である 「9割の人が勘違い。面接は課題解決の場である」ほか、面接官の評価軸・自己PRの伝え方をプロが動画で解説。動画講座を見る →